においの治療~嗅覚の回復 | においの外来_嗅覚外来

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においの治療~嗅覚の回復

はじめに

 ご覧いただきありがとうございます。インターネットには真偽を問わず情報が氾濫錯綜しており、安易に自己判断されると症状の悪化、治療の選択の誤り、タイミングを逸する等、患者様の不利益をまねくリスクが多々あります。嗅覚の治療は未だ未知なる部分も多いため、当サイトの内容も含めて、「本当なの?」と半信半疑でご覧いただく程度でお願いいたします。もちろん内容に正確を期すよう常に気をつかっておりますが、当サイトを運営するあさま耳鼻咽喉科医院は、嗅覚障害の治療のコンテンツに関して万人向けでない部分もあるため、いかなる責も負わないということをご了承の上ご覧下さい。

薬による嗅覚障害の治療

 二種類に分けられ、鼻の通気障害に対する治療と、嗅粘膜および嗅球の細胞再生に対する治療です。

 アレルギー性鼻炎(肥厚性鼻炎も含む)による通気障害がないのにアレルギー性鼻炎の治療を漫然と続けていてもしても嗅覚の回復にはつながりません。一方で、嗅粘膜および嗅球の障害がないのに細胞再生を促す治療、メチコバールや漢方薬を内服するのも意味がありません。

アレルギー性鼻炎の一般的な治療薬

 アレルギー性鼻炎に対する治療は、呼吸性の嗅覚障害(においのトラブル参照)の治療を目的に行います。要するに、嗅粘膜までの空気の流れを良くしよう、という目的のために行います。外用薬としては、血管収縮剤による点鼻薬(プリビナ、ナシビン(M)スプレー、コールタイジン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン他OTC多数)、ステロイド剤(フルチカゾン[フルナーゼ点鼻]、ベクロメタゾン、モメタゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン[リンデロン点鼻])による点鼻薬があります。内服薬は抗アレルギー剤、抗ロイコトリエン剤、ステロイド剤(セレスタミン、プレドニン等)などがあります。

注意! 嗅覚の回復にはとりあえずステロイド!?

 内服、外用も含めてステロイドは嗅覚粘膜の再生に効果があるという誤解が一部の専門家にさえもあるようです。しかし、例えばプレドニンというステロイド薬は白血病の治療薬にも使われます。ステロイドは細胞周期(毛髪周期とほぼ同じ)を抑制するため、細胞の増殖を抑制する方向に制御します。ゆえに、「ステロイドは嗅覚障害に効果があるの?」という問いには、「アレルギー性鼻炎、特に好酸球副鼻腔炎には効果があるが、嗅粘膜の再生には効果が期待できない」という見解が現状では一般的です。ステロイドには副作用があり諸刃の剣とも言えますので、使用には外用薬・内服薬とも医療者による細心の経過観察が必要です。

 一般的には、嗅覚障害⇒セレスタミン内服・リンデロン点鼻という治療法が要注意です。例えば視力障害や顔面神経麻痺(急性期を除く)にステロイドを内服したり外用薬を塗ったりするのは明らかに間違っています。嗅覚の回復にも同様なことが言え、神経障害(急性期を除く)の治療にはステロイドは効果を持たないというのは、医学界全般の共通認識です。

嗅細胞および嗅球の細胞再生に効果が期待できる薬剤

 嗅覚神経の障害に対する保険適用の内服薬は、以下の3種類です。

 ATP(アデホスコーワ®) 、メコバラミン(メチコバール®)、当帰芍薬散です。亜鉛剤(プロマック®)も含める場合もありますが、亜鉛不足のケースはかなり少ないと思われます。

 ATPは血流を改善し代謝を改善する目的で使用されるお薬です。しかし最近、健康保険の査定が厳しくなり、そう簡単には処方できなくなりました。唯一、頭部外傷による嗅覚障害というケースでは保険適用になります。

 メコバラミンは活性型ビタミンB12のことです。市販のサプリメントに含まれているビタミンB12はシアノコバラミンといいちょっと違います。ビタミンB12はDNA合成に関与しており、細胞再生のために必須な要素です。ビタミンB12も食事の中に豊富に含まれているので欠乏することはまずないのですが、胃腸障害があると吸収力が極端に落ちます。メコバラミンはシアノコバラミンより長く体内に留まるという報告もあり、そのような方のために効率よく吸収できるように開発された薬剤だと言えます。

 当帰芍薬散は婦人病薬として開発された漢方:当帰(トウキ)が入っているのが特徴です。とある耳鼻科医が嗅覚障害の患者さんに内服させたら好成績を得たというのが根拠になっています。嗅覚障害~更年期の女性が多い~妊娠初期に匂いに敏感になる~錯嗅というキーワードをつなぎ合わせていくと、朧気ながら嗅細胞および嗅球の細胞再生に対するヒントが浮かび上がってきます。

嗅覚の回復に対する手術の考え方

 嗅覚の回復に対する手術は、嗅粘膜に少しでも多くのにおい分子を届けるという目的のために行われます。逆に物理的障害(呼吸性嗅覚障害)がない場合は手術適用にはなりません。

 さらに鼻の内部構造は、鼻の外見以上に個人差が激しいため、執刀医は流体力学的観点よりあらかじめ詳細に検討することが要求されます。

静かな水の一直線の流れは層流といいます。一方予測不可能なランダムな動きをする流れは乱流といいます。水のも空気も流体理論はほぼ同一で、空気は15paもの気圧差にて狭い鼻腔内を駆け抜けます。当然壁にぶつかってぶつかって・・・、という事がおきて乱流が起こります。

 

以下の動画では、嗅粘膜付近を通る空気を追跡すると、渦を作ったり、呼吸の加速度変化と共に流れの経路がダイナミックに変化している貴重な姿がご覧いただけます。

 

また、動画には吐く息が嗅粘膜を通り抜けていく姿も示されております。

食事の風味は嗅覚が7割、味覚は3割といわれており、呼気(呼吸ではく息)によってにおいが鼻の後ろから運ばれて嗅粘膜を通ります。このように、鼻の後方からの空気の流れ方は、におう・味わうという動作において重要な意味を持ち、食欲とも関連することでしょう

注意! 鼻手術を勧められたら!?

 病院やサージセンターで盛んに行われている鼻の手術には二つあります。一つ目は、好酸球副鼻腔炎に対する手術。これは自己修復不能に陥った粘膜を可能な限り取り除きポリープ再発を防止します。二つ目は、比較的重傷のアレルギー性鼻炎に対し行われる後鼻神経切断術(翼突管神経切断術)。これは神経を切断する事により、鼻汁過多やくしゃみを改善させます。

これらは手術目的が嗅覚改善ではないため、「においは戻りますか?」「風味はもどりますか?」という問いには、「もどるかもしれませんね!?」という曖昧な答えしか本来できません。

 しかし昨今のインターネットでのクリニック紹介の風潮として、「においの治療」が「鼻の手術治療」への呼び水、あるいは混同させてしまう風潮に(意図的にではないにしろ)なってしまっている傾向があります。

手術療法のみならず、嗅覚障害の治療は一刻一秒を争うものではありません。どうか患者様におかれましては、まずじっくりと腰を据えて疾患と向き合い、専門家と膝と膝をつき合わせながら共に原因を調べ、個人個人の嗅覚障害の状態に合わせた治療法を探してもらってください。できれば複数の解決法を同時に提案してもらえるような医療機関が理想です。(嗅覚外来の大学一覧

においのリハビリ

現在、東京慈恵医科大学の森先生らによって提唱されている方法は、数種類のにおい物質を混合したものを12週ごとに変えていくものです。それぞれ系統の違う馴染み深いにおい物質が混ざっているので、多くの受容体を刺激するリハビリです。(出典

嗅覚障害の新しい治療法

(Asama Instituteにて現在研究中)