【図4動画付解説】数値流体力学を用いた気導性嗅覚障害の分析
2022/01/23
図4はこの研究の各論ですが、私達の解析システムの実用化のアイデアの一例にしか過ぎません。
A-Dは一人の上鼻甲介蜂巣の気導性嗅覚障害の患者さんを解析したものです。
E-Hは一人の中鼻甲介蜂巣の気導性嗅覚障害の患者さんを解析したものです。
鼻の内部には3種類の整流版があり、下段は下鼻甲介、中段は中鼻甲介、上段は上鼻甲介といいます。
鼻甲介は普通は一枚の板状の骨と両脇に鼻粘膜が付いていますが、蜂巣は骨板が中空構造になっています。
上鼻甲介蜂巣または中鼻甲介蜂巣は比較的稀な構造形態で、これまでに嗅覚障害、頭痛などの障害が起こりやすい事が報告されています。
本研究では、上鼻甲介蜂巣は嗅裂が袋小路の構造であって空気が奥まで行き渡らない事、嗅裂の空気の流量が健常人と比べて少ない事がわかりました。
また中鼻甲介蜂巣は嗅裂はノーマルスリットであったものの、嗅裂までの流路で低速の渦を起こし(H)、空気停滞による炎症を示唆する所見(E)も見つかりました。
写真Eは中鼻甲介蜂巣の前方粘膜が発赤していて、慢性的な低速空気の停滞による軽微な炎症と考えることができます。
また動画中では、鼻背部の流路で少量急速に流れており、これも嗅裂にたどり着く前ににおい物質が急速な枯渇する可能性があることを示唆しています。
患者さんを個々に解析していくというメリットは、外科的手術において術者医師が事前に構造と流れ方をよく理解して、実際の手術の役立てることにあります。
ですので今後の私たちの使命は、この便利なシステムの存在を日本のみならず世界中の医療者へ広めていくことにあると考えています。