においの検査~嗅覚検査 - においの外来_嗅覚外来においの外来_嗅覚外来

においの外来 NIOI GAIRAI

においの検査~嗅覚検査

家庭でできる簡単な嗅覚検査

 ご自宅で簡易の嗅覚検査をするために、強いにおいを発するものを用意しましょう。お菓子作り用に300円程度で入手できるオレンジリキュールがおすすめです。(バニラエッセンスでもいいのですが、部屋ににおいが残りやすいです。) 次に、綿棒に用意したリキュールを2,3滴たらします。片方の鼻穴を手で塞いで、もう一方の鼻穴でにおいを嗅いでみましょう。

 これで、右の嗅粘膜と左の嗅粘膜の感じ方の違いが分かります。もしも左右で強弱が違うならば、呼吸性か嗅粘膜障害性の嗅覚障害を疑います。

 においの種類を問いませんので、果実、香水、アロマ等で色々試されてみるとよいでしょう。部屋や服ににおいがついてしまわないよう気をつけて行ってください。

クリニック・病院の嗅覚検査

 保険適応の嗅覚検査は2種類あり、アリナミン注射によるアリナミンテストと、T&Tオルファクトメトリーと呼ばれています。

 アリナミンテストという嗅覚検査で使用するアリナミン注射は別名にんにく注射といって、自由診療のビタミン点滴で使われる事が多い薬剤です。原理は腕の静脈にアリナミン注射を打った後、ニンニク臭の発現時間とそのニオイが消失するまでの時間を測定する方法です。この嗅覚検査の結果が良いと治りやすく、悪いと治りにくいのではないかという、嗅覚障害の予後判定に使います。しかしあくまで経験則であって科学的根拠があるわけではなさそうです。

 T&Tオルファクトメトリーという嗅覚検査では、5種類のにおい分子を濃度の薄い液体から順々に嗅いでいきます。実質上の本来の嗅覚検査(基準嗅力検査)と言えます。におうという行動には、「なんだかわからないけどにおう」(検知)というのと「このにおいは○○のにおいだと確信する」(認知)という二つの状態が存在します。錯嗅(さくきゅう、においのトラブル参照)では、検知と認知の濃度の差が広がります。意外と数が多い嗅覚脱失の患者さんは、5種類のにおいが最高濃度でも「においが存在することもわからない」という方です。

全国で嗅覚外来が少ない理由

 研究者(指導者)が少ないというのもありますが、嗅覚検査室の設備的な問題によりできないというのが主な理由だと思います。(嗅覚専門外来の大学設置状況)

 前述のT&Tオルファクトメトリーという嗅覚検査は非常に厄介な検査で、5種類のにおいのなかには悪臭も含みます。嗅覚が完全に失われている状態(嗅覚脱失)の患者さんを検査する場合、悪臭も最高濃度まで嗅いでもらい、測定しなくてはなりません。その場合、排気・脱臭装置が不完全だと嗅覚検査室が悪臭で充満してしまいます。さらに患者さんと検査員の衣服まで悪臭が染みつき、診察室まで妙なにおいが漂うことになります。そのため専門医向けの成書でも悪臭の検査を除外するよう堂々と勧めている始末です。しかし、悪臭もにおいの一部で、特に腐敗臭の探知は嗅球にある、原始的な魚類にも存在する、生命体の生死を左右する重要な部分ですから、折角の嗅覚検査で省略してしまうことは疑問に思います。

においスティック(OSIT-J)

写真上方のアタッシュケースがT&Tオルファクトメトリー、下方がにおいスティック(OSIT-J)、右下がオープンエッセンス、左においてある小瓶達はアロマエッセンスです。

 2013年に東北大学の神経内科でなされた研究によると、においスティックによる嗅覚検査にて12満点中4点以下だと既にパーキンソン病と診断された人が、更に認知症を伴うパーキンソン病に進行しやすいという報告がなされています。

 においスティックの利点は、周囲の空気を汚さないため特殊な設備を必要としない、検査員の技量の差がでにくい事にあります。欠点は、比較的弱いにおいのないため検査誤差が生じやすい、冷蔵庫保管、保険未承認であるため一般医療機関は使用しづらい(メーカー希望小売価格1回600円)ことがあげられます。

オープンエッセンス

 オープンエッセンスという嗅覚検査は、においスティックの欠点、すなわち冷蔵庫保管という欠点を補完した、室温保存の製品です。検査員なしでセルフでできかなり簡便な嗅覚検査です。においスティック同様12点満点で、正常値は8点以上なので、4回まで間違えても異常となりません。リラックスして行うことができます。

 欠点はにおいスティックよりも更に嗅覚検査コストが高いことにあります。(1回当たり1,300円) 医療機関における検査コストとしては異常に高い部類に入ると言わざるをえません。官民共同開発で2008年に登場したのにもかかわらず、あまり普及していないのはそういった理由もあるのかもしれません。もちろんまだ健康保険では認められていない嗅覚検査ですが、設備が必要なく定性的検査として非常に有用です。

未来の嗅覚検査

Asama Instituteにて現在研究中)