人間の嗅覚は実はイヌ並!?_最新の知見より
2018/05/14
米科学誌サイエンスに掲載された論文によると、米ラトガース大学の神経科学者ジョン・マクガン氏は、人間の嗅覚が劣っているという、同氏が言うところの「誤解」を導いた過去の研究や歴史的文献を見直した。人間は約1万種類のにおいを嗅ぎ分けられると長年考えられてきた。だが、その数は1万どころか実際には1兆種類近いとマクガン氏は言う。
同氏の論文によると、人間の嗅覚は貧弱だとする「俗説」の出所は、19世紀フランスの脳外科医で人類学者のポール・ブローカだという。ブローカは1879年に発表された論文の中で、人間の脳の中で嗅覚野の容積が他の部位に比べて小さいことに言及していた。このことは人間が自由意志を持ち、イヌや他の哺乳類のように生き残るために嗅覚に依存する必要がないことを意味するとブローカは主張した。
マクガン氏によると、嗅覚情報を処理する脳組織の嗅球(きゅうきゅう)が脳全体の容積に占める比率をみると、人間のわずか0.01%に対し、ネズミでは2%に及ぶ。だが人間の嗅球は実サイズがかなり大きく、成人で約60ミリに達することもあり、他の哺乳類の嗅球と比べてほぼ同数の神経細胞を持っている。
嗅覚に関する人間とイヌとネズミの間の違いは、特定のニオイに対する感受性の差に帰する可能性がある。「人間にはニオイの痕跡をたどる能力があり、人間の行動状態と感情状態はともに嗅覚に影響される」とマクガン氏は記している。
「Poor human olfaction is a 19th-century myth.」
(PMID:28495701)
上等のワインの香りを嗅ぐ事に関しては人間の法が上手いかもしれませんが、電柱の周りについた様々な尿の臭いを分析することにかけては、やはりイヌに軍配があがることでしょう。